こだわりの味協同組合〜富永会長のおはなし〜
18年ほど前…
愛知に引っ越してきたときのことです。
近所のアツミスーパー(田原店)に初めて足を運んだとき、棚を見て思わず立ち止まりました。
「自然の味そのまんま」というシリーズがあったんですね。
裏の表示を見ると、どれもちゃんとしている。
国産、添加物なし、在来製法
自然食品店に置いてあるような、品質の高い商品ばかり…
普通のスーパーに、これほどきちんとした商品が置いてある。
正直、かなりびっくりしました。
それが、「こだわりの味協同組合」の創設者、富永会長との間接的な出会いでした。
+++
先日、富永会長のインタビュー動画が、なぜか僕のYoutubeにおすすめで上がってきて。
この動画、いろんなお話がありましたよ。
- お酢、豆腐、納豆、砂糖…食品表示の正しい読み方
- 表示に出てこない「隠れた添加物」の仕組み
- 食品業界が歩んできた道のり、中小メーカーが消えていった理由
- 会長自身の半生——反骨の少年時代から事業継承まで
- 「こだわりの味共同組合」を立ち上げるまでの失敗と赤字の話
- 納豆づくりへのこだわり(緑大豆、容器、タレ、からしまで)
- 消費者・販売店・メーカーが一緒に賢くなるための勉強会の取り組み
長い動画で2時間近くあるのですが、全く飽きることなく、最後まで見ちゃった。
今日はその中で、僕が一番印象に残った話をシェアしたいと思います。
+++
会長が事業を引き継いだのは、26歳のとき。
昭和50年頃のことです。
その頃、静岡県には納豆屋さんが33軒ありました。
今は2軒だそうです。
この数字が、すべてを物語っている。
+++
会長は若い頃、毎日トラックで配達に回っていました。
朝6時に出発
帰りは早くて20時 遅いと24時
毎日3〜4時間睡眠
休みは、正月の3日だけ
猛烈な働き方ですね…
その途中、ルート上の豆腐屋、こんにゃく屋、わかめ屋、漬け物屋に立ち寄るようになった。
特に目的があったわけじゃない。
ふらっと顔を出すと…
業界人しか知り得ないようなことをいろいろ話してくれる。
それが面白い。
こちらが知識をつけて質問を深めると、相手も「こいつ分かってきてる」と感じるのか、どんどん本音を話してくれるようになる。
作り方だけじゃなく、誤魔化し方まで。
「スーパーを騙すなんて、赤子の手をひねるよりもっと楽だよ」——
そう言って笑う業者も、実際にいたそうです。
+++
40代に入ると、添加物の営業が本格化します。
「これを使えば古い大豆でも発酵できる」「賞味期限が伸びる」——
化学薬品メーカーから次々と情報が届くようになった(営業をかけられる)。
品質を落としてコストを下げる商品が、業界にじわじわと広がっていきます。
同じ頃、主要取引先だった静岡の生協が神奈川の生協に吸収されます。
新しいバイヤーから「輸入大豆を使え、添加物を使え、値段を下げろ」と要求され、会長は断り取引をやめた。
売上の3分の1を失います。
ただこの取引、特殊な5個パックを深夜まで手作業でこなす割に利益が出ていなかった。
取引をやめてから2年後、むしろ黒字になりました。
むしろ早く取引をやめた方が良い相手だった。
会長は、数字が苦手なんだそうです笑。
その後、水戸納豆が全国に進出してきます。
50g×4個で78円という価格で地方を攻め、地元業者が潰れたら値段を戻す戦略です。
会長は取引先を一軒ずつ回り「自分が3個で同じ78円で出す、待ってくれ」と頼み込んで、なんとか乗り切りましたが…
他の地元メーカーは次々と潰れていきました。
50代に入る頃、静岡の納豆屋は33軒から5〜8軒ほどにまで減っていました。
+++
会長は、ずっと方針を変えない。
ちゃんとした食べ物を作る。
届ける。
この想いで、53歳のとき「こだわりの味共同組合」を立ち上げます。
同じ志を持つ小さなメーカーを集め、「自然の味そのまんま」というブランドをつくる。
大手には卸さない。
どのスーパーにも同一価格で卸す。
規模に関係なく。
経済の論理から見れば、完全に非常識な話です。
設立後も赤字は続き、15年以上。
子供の頃から集め続けた切手と古銭のコレクションを1億円近く売って、運営費に充てた。
やっと黒字になったのは、設立から13〜15年後のこと。
時代が追いついてきました。
今では全国140社以上のスーパーが取り扱い、売上は毎年伸び続けています。
+++
今、会長が力を入れているのが勉強会です。
加盟スーパーがお客さんを集め、会長が食の裏側を語る。
お金は一切もらわない。
売り場の社員も一緒に聞く。
「自分たちが知っている常識が、実は常識じゃなかった」ということを、一人でも多くの人に知ってもらうために。
「いい商品を置くだけでは足りない。
それを説明できる店員がいるか、理解できるお客さんがいるか。
メーカーと販売店と消費者の3つがタッグを組んで初めて広がっていく」——
これが、この活動全体の考え方です。
今、「自然の味」を選ぶ消費者は1万人に1人ほど。
それが1%になれば、真面目なメーカーと真面目なスーパーが生き残れる日本になる。
その日を目指して、会長は今日もコツコツと続けています。
+++
僕たちはその勉強会に、何度も足を運びました。
海藻の回、油の回、乳製品の回…テーマは毎回ひとつ。
それを2時間かけて深く掘り下げる。
「海藻で2時間?」と思うかもしれないけど、本当に飽きないんです。
歴史から産地から産地偽装の手口、添加物の入り方まで。
ウィットも効いていて、こんな言葉を言うんですね。
「みんなそうやって、添加物を旦那に食わせて、早く死ねばいいって思ってるんでしょ?
違うの(笑)」
笑えるような、笑えないような。
でも講演後に個人的に質問に行くと…
いつもものすごく紳士的に、丁寧に答えてくださる。
ダンディーなジェントルマンなんです。
昔(2017年)、勉強会で教えていただいたことをまとめた記事⇩
大豆&甜菜糖と三温糖
https://kbansei.jugem.jp/?eid=1008
砂糖の話その他~もち米、和三盆、黒糖、上白糖、糖蜜、はちみつ~
https://kbansei.jugem.jp/?eid=1009
もう一つ、心に残っていること。
毎年3月にある「自然の味」のアンケートキャンペーン。
妻が毎年応募します。

すると、結果をまとめたものが半年後ぐらいに自宅に届く。
その封筒に、いつも珍しい少額の切手(2円とか5円とか)がたくさん貼ってあるんですね。
「この切手は、会長のコレクションなんだろうな。
きっと会長が一枚ずつ貼ってるんだろうな」と、ほっこりします。
+++
会長の勉強会で得た知識も、僕の食の基礎を作ってくれました。
そして、こだわりの味協同組合の商品は、我が家の食卓によく並んでいます。
こんにゃく、お揚げ、たまご、調味料類…
最近のお気に入りは…
『桑の葉 まるごと青汁』

これ、なかなか美味しいんです。
しかもノンカフェイン、いつでも飲める。
食物繊維も含まれ、お通じにもちょっと良い。
会長には、知識だけじゃなくて、日々の食卓そのものを豊かにしてもらっているな、と思います。