夜、なかなか寝つけない。
夜中にふと目が覚めて、そのあと眠れない。
朝までぐっすり、が難しい。

こんなお悩み、講座でもよく聞きます。

睡眠の話になると、たいてい「寝る前のスマホ」とか「部屋を暗く」とか、そういう方向になりますよね。
もちろん、どれも大事なことです。

でも先日、「食事」と眠りの関係を調べた研究を見つけました。
なかなか大きな規模の研究だったので、今日はそれを紹介してみたいと思います。

どんな研究だったか

アメリカの「Women’s Health Initiative(WHI)」という、女性の健康を長く追いかけている大きな研究があります。
そのデータを使った解析です。

対象は、閉経後の女性74,513人。平均年齢は63.5歳。
このうち、開始の時点で不眠のなかった50,644人について、3年後に新しく不眠になったかどうかを調べています。

知りたかったのは、「食事の質が高い人は、そのあと不眠になりにくいのか」という点です。

食事の質は、2つのものさしで測っています。

  • 地中海食(aMed)…野菜、果物、豆類、ナッツ、魚、オリーブオイルが多く、赤身肉が少ない食べ方
  • DASH食…もともとは血圧を下げるために作られた食べ方。野菜・果物・乳製品が多く、塩分と砂糖が控えめ

眠りのほうは、寝つき、夜中に目が覚めるか、朝早く目が覚めるか、目が覚めたあと寝直せるか、そして眠りの満足度…この5つを聞く質問票で判定しています。

結果はどうだったか

食事の質が高いグループは、3年後に新しく不眠になる人が、少なめでした。

  • 地中海食に近い食べ方の人…7.5%低い
  • DASH食に近い食べ方の人…6.3%低い

正直に言うと、数字としてはそれほど大きくありません。
「食事を整えれば眠れるようになる」という話ではないです。

ただ、7万人という規模で、統計的にはっきり差が出ている。
そこは押さえておいていい点かなと思います。

僕が「へえ」と思ったのは、ここ

いちばん面白かったのは、食品のグループごとに分けて調べた部分です。

個別の食品で不眠との関係が見られたのは、ナッツと豆類だけでした(5.7%低い)。

乳製品、塩分、赤身肉・加工肉、砂糖入りの飲み物。
これらは、単独では関係が見られなかったんです。

つまり「これを減らせば眠れる」ではなかった。
むしろ「足したほうがいいもの」のほうに、関係が出たということですね。

ここからは僕の見立てになります。

ナッツにも豆にも、マグネシウムが多く含まれています。
マグネシウムは、神経の高ぶりを落ち着かせる方向に働くミネラルです。
そのあたりが関わっているのかな、と想像しています。

(ただし、この研究はマグネシウムそのものを測ってはいません。あくまで僕の推測です。)

ここは、注意して読みたいところ

この研究、気をつけて読みたい点もいくつかあります。

まず、これは観察研究です。
「食事の質が高い人は不眠が少ない」という関連は見えていますが、「食事を変えたから眠れるようになった」とまでは言えません。

逆の可能性も十分にあります。
よく眠れている人のほうが、日中の調子がよくて、結果的に食事も整いやすい…ということですね。

それから、食事の調査は最初の1回だけです。
3年のあいだに食事がどう変わったかは、追えていません。

対象も、閉経後の女性で、9割近くが白人。
日本で暮らす人にそのまま当てはまるかどうかは、わからない部分が残ります。

研究チーム自身も、「これをはっきりさせるには臨床試験が必要」と書いています。

では、何を食べればいいのか

じゃあ意味のない研究なのかというと、僕はそうは思いません。

この研究が言っているのは、「これを食べれば眠れる」ではありません。
「食事の”型”が整っている人は、眠りも整いやすいかもしれない」ということだと思っています。

地中海食もDASH食も、土台は野菜、果物、豆、ナッツ、魚。
特別な食材は、ひとつも出てきません。

ただ、日本ではそのまま真似しにくい部分もあります。
ナッツです。

日本では、「ナッツはおやつ」という感覚の人が多いんじゃないでしょうか。
食事の一部として毎日ひとつかみ、と言われても、なかなか続かないと思います。

その点、豆は日本の食卓に近い食材です。
納豆、お豆腐、お味噌、油揚げ。
どれも、特別に買い足さなくても手が届きます。

そしてもう一つ。
もしマグネシウムが関わっているのだとしたら、日本には海藻もあります。
わかめ、海苔、青のり、青さ。

(くり返しになりますが、この研究はマグネシウムも海藻も調べていません。僕の推測です。)

あるだけでは、食べたことにならない

ただ、これは「日本にある」というだけの話です。

あるからといって、食べているとは限りませんよね。
豆も海藻も、何日も口にしていない、という方は少なくないと思います。

どちらも、意識しないとそのままになってしまう食材です。
だから、意識して食べましょう。

お味噌汁に、わかめを。
ごはんに、海苔を一枚。
納豆を一パック、お豆腐をひと切れ。

これで劇的に眠れるようになります、とは言いません。
でも、体の土台を整えることは、めぐりめぐって眠りにもつながっていくはずです。


📌 参考にした研究
Zuraikat FM, et al. “Greater adherence to healthful dietary patterns is associated with lower insomnia risk in the Women’s Health Initiative Observational Study.” SLEEP.
https://academic.oup.com/sleep/article/49/1/zsaf316/8279892